chikyuwatomodachi’s diary

地球はともだちのお話

父の日に見えた母マリ子の変化

お仏壇にはお茶とごはん。

制服に身を包みいぶかしげな表情で写るコワモテの父。

それもそのはず、父イサムの職業は警察官だった。
しかも現役時代、警視庁に勤務し警視正というポジションを最終学歴が高卒という叩き上げで勤めあげた。

そんな父も他界して丸5年が経過。
昨年の春まで悠々自適に暮らしていた母マリ子との同居がはじまって1年。

これはとっても個人的な家族のはなし。

母マリ子は父イサムとの思い出に浸る日々だけれど、悲しみは無くなり寂しさだけが残っている。

この一年間、客観的に同居という関係を
見てきた。

23歳からのひとり暮らしで都内や海外へと
居住を移し、再び実家へ戻って来たのは
帰国後で27歳には再びこの家を出た。
それが結婚だった。

一年前に実家へ来たのは離婚がきっかけでもある。
二人のこどもを育てるのに必要な環境が揃っていたからだ。

そしてもうひとつはゆくゆく母マリ子を介護する人が居なかったから。
兄二人は其々家庭もあり、仕事も忙しい。
ひとりは会社社長、ひとりは公務員。
どちらも家族の生活を支えるべく働き詰めだ。


体調を崩したり、ケガをしたときなどは駆けつけて来たが同居とはまた別の次元だとわかる。
母マリ子はこの一年間での変化が見られた。

最初はこの家に住まわしてあげている。
そういうおごりがあった。

最近はわたしの面倒を見てくれるのは誰?
依存が生まれてきた。

79歳の今もまだ長く勤めた会社へ通っている。
経済的にも自立してきた母マリ子が
そろそろ引退というゴールが見えてきて
身体の不具合や心のアンバランスさが出て来た。

特に心の部分では何か【こどもがえり】
をしている。
中学生の孫とは対等にやり合う。

常にお小言が止まらない。

韓国から帰国した娘めい20歳が

「マリちゃん、なんだかおかしいよ。
愚痴や嫌味とかしか言わないし。。。」

同居という日々の生活の中で、なんとなく流れてしまっているのは家族との関係。

きっかけは些細なことだったが、買い物へ
出かけたスーパーマーケットで母の態度に
わたしが反応してしまった。

車に戻り話をする。

「お母さん、何か気に入らないことがあるときは話し合った方がいい。嫌味や愚痴が増えて家族がギズギスしている。孫たちはそれに反応しているんだよ。」

そう言うと、母マリ子は貝のように口を閉ざしてしまった。

久しぶりの外食で浮き足だっていた息子は
不穏な空気にフリーズ。

夜の町、車を走らせながら一瞬考えてしまった。別々に暮らした方がお互いを思いやれるのかも知れない、、、と。

車をラーメン屋の駐車場に停めて

「凱、先に入っておいて」

母と車の中で対話にならない。。。
貝のまま。あさりかしじみかハマグリか。

夕飯の間もイマイチな反応のまま
ところがラーメンのあとのソフトクリームを食べたあたりからご機嫌が回復してくる。

母マリ子の表情が急に晴れてきてひとこと。

「ここの餃子はぜんぜん美味しくない」

母マリ子よ、お腹が空いていたのね。

そして、日々の暮らしの中でついつい流してしまっていることに気づかされたのは
身近な人の声。

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ちょっとしたことで怒ったり
表情がずっと雲っていたり
身体に不具合を感じていたり

身内だからこそ近すぎて見えないと
気づけないことがある。

それが【老い】

天真爛漫なお嬢様気質の母マリ子とは50年の付き合い。

何十年、時が経とうと一生涯わたしたちは
母と娘の関係。

父の写真が少し哀しげな表情に見えた。
黄色いガーベラの花が一輪向き合っている。